本の森/音の海

本と音楽についてのノート

ブラッド・メルドー『ファインディング・ガブリエル』

 

 想像以上に強烈な音楽で、一気に惹きこまれてしまった。

様々なキーボードを駆使するメルドーと、鋼鉄のようなマーク・ジュリアナのドラム。そこにシャープなホーンとコーラスが切り込んでいく様がスリリングこのうえない。

去年出たカマシ・ワシントンの新作でもコーラスが効果的に使われていたけど、カマシの方はスピリチュアルな面を強調する効果があったのに対し、本作はアンサンブルのひとつとして、他の楽器とからんで曲のテクスチュア―を立体的に拡げていくようにぼくには聴こえた。

くぐもった音色のメルドーのキーボードを聴いていると、ジャズというよりプログレ、それもカンタベリー系に通ずるものを感じるのだけれど、まぎれもなく現在の音楽として躍動しているのが素晴らしい。

これまでもすごい才能だと思ってはいたけど『エレゲイア・サイクル』を除いては、真に愛聴するところまではいかなかったメルドーの音楽。けれどもこのアルバムは何度も繰り返し聴いているけど、未だに新鮮に響く。ぼくにとっての愛聴盤が新たに増えたことがうれしい。