本の森/音の海

本と音楽についてのノート

石川淳

石川淳「天門」(4)

幼少期の罪の意識に囚われ続けていた遠矢東吉を解放したのは、幼馴染だった房子との一夜の愛だった・・・とまとめてしまうと陳腐なロマンスに見えてしまうだろうか。 しかし、ここで描かれた救済は「本来の自己を取り戻す」とか「魂が成長する」ものとは似て…

石川淳「天門」(3)

青年弁護士の遠矢東吉は、幼少のころ犯した罪の意識を背負いながら日々を過ごしている。5歳のころ、盗み癖のやまなかった東吉を諫めた後、縊死をとげた祖母の足に抱きついたのが、かえってその死を早めてしまったのではないかという思いが、形見として残さ…

石川淳「天門」(2)

石川淳は、かつて朝日新聞に連載した文芸時評の中で、吉田健一の長編「絵空ごと」を取り上げて、 ここに至つて、わたしはどうも新版の桃花源記を読まされたのではないかとおもつた。いにしへの桃源は人間が無為孤独にして自然の中に見つけるものであつたが、…

石川淳「天門」(1)

天門 作者: 石川淳 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 1985/12 メディア: 単行本 クリック: 6回 この商品を含むブログ (1件) を見る 石川淳が完結させた最後の長編。連載完結が1985年だから、実に86歳のときの作品。この後エッセイ集「夷斎風雅」を挟ん…